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● European Pressphoto Agency
シカゴ近郊にある米エネルギー省のテバトロン加速器
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ウォールストリートジャーナル 2012年 7月 3日 12:57 JST
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_471332
「ヒッグス粒子」示唆する新データ 米研究チームが発表
米国の科学者チームは2日、未発見の素粒子「ヒッグス粒子」の存在を示唆する新たなデータを発表した。
ヒッグス粒子は、宇宙の組成に関する現在の理解にとって不可欠な粒子で、科学者たちは長年にわたってその存在を確認しようと努力している。
米チームのデータはシカゴ近郊にある米エネルギー省のテバトロン加速器から得られたものだが、それ自体ではヒッグス粒子の存在を確認するには十分でない。
しかし、欧州合同原子核研究所(CERN)の物理学者たちが4日に発表する予定の実験結果は、ヒッグス粒子がどこに潜んでいるかを示すもっと有力なシグナルを提供する見通しだ。
ヒッグス粒子は、理論上の粒子で、その存在が確認されると、宇宙において質量を持つ物質もあれば、エネルギーしか持たない物質もある理由が説明できる。
発見されれば、現代物理学の最大級の業績になる可能性がある。
一方、CERNの関係者は固く口を閉ざしている。CERNの広報担当ジェームズ・ジリーズ氏は
「4日に公表される実験結果は興味深いだろう」
とだけ述べた。
同氏は、それはヒッグス粒子の発見を確認するものになるのかとの質問に、
「決定するのは自然であって、われわれではない」
と語った。
ヒッグス粒子の質量が何であるのか誰にも分かっていない。
このため、科学者たちは巨大な機械装置の中で素粒子を衝突させてみたり、この過程で亜原子粒子(原子よりも小さい粒子)が組成されるのかを見極めたりすることによって、ヒッグス粒子を間接的に追求せざるを得ない。
ヒッグス粒子の探求が最も大きく前進したのは昨年12月のことだった。
スイス・ジュネーブ近郊にあるCERN監督下の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で実験した研究者たちはその際、2つの独立した実験から得たデータから、ヒッグス粒子の予想質量のレンジを狭めた。
つまり、ヒッグス粒子が存在するとすればその質量は124~126ギガ電子ボルト(GeV、1GeVは10億電子ボルト)のレンジになる公算が大きいとした。
その後、LHCの衝突実験のデータを精査した上で、このレンジを122.5~127.5GeVと今年3月に改めて公表した。
そして今回、米チームはテバトロン加速器から得たデータにより、ヒッグス粒子はもし存在しているとすれば125GeVの質量と矛盾していないことを示した。
テバトロン加速器を監督している国立フェルミ加速器研究所(フェルミラボ)の素粒子物理学者ロブ・ロスター博士は
「われわれのデータは、わたしを興奮させるのに十分で、あなたの自宅を賭けてもいいほどだ」
と述べたが、
「わたし自身の自宅を賭けてもいいとまではいかない」
と語った。
フェルミラボの研究チームによれば、2つの実験結果に基づき、このシグナルが統計上の偶然である確率は550分の1、つまり2.9シグマ(シグマは統計上の有意性を示す尺度)にとどまるという。
科学者がある粒子が発見されたかどうかを言うには5シグマ水準(訳注=99.99995%確実)に達する必要がある。
これが、4日に予定されているCERNの発表を物理学者たちが首を長くして待っている理由だ。
今回、CERNは昨年12月に入手可能だったデータ量のほぼ2倍のデータ量に基づいた結果を公表するからだ。
英キングズ・カレッジ(ロンドン)教授でCERNの客員教授のジョン・エリス博士(理論物理学)は
「統計上、昨年12月のデータから推論するとすれば、われわれは発見のシグニフィカンス(有意性=確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考えられること)に極めて近いことになる」
と述べ、
「ヒッグス粒子は隠れるところが全くない」
と語った。
エリス博士は、LHCの最新の実験ラウンドからのデータを見ていないと述べ、約125GeVのヒッグス質量の可能性を示唆した最後のデータ群は、3シグマのシグニフィカンスしか確保していないと付け加えた。
同博士は、来るべきデータ、つまりCERNでのヒッグス関連の2つの独立した実験のおのおのから得られるデータは、4シグマ水準のシグニフィカンスに到達する可能性があると述べた。
同博士は
「こうしたデータを非公式に合計すれば、5シグマ水準を超えることになるかもしれない」
と語った。
しかし、CERNの科学者がたとえヒッグス粒子が潜伏しているところをピンポイントで特定したとしても、正式の発見と主張するにはまだ不十分かもしれない。
2つの実験結果はともに4シグマを確保しているかもしれないが、これらのデータは両立していないかもしれない。
また、ヒッグス粒子の属性とされる一部の特性、例えば「スピン」が全くないという特性を実証する必要がある。
エリス博士は、4日のCERNの発表は重要だと予想している。
同博士は、
「わたしの推測はCERNの廊下で皆が話していること」
に基づいていると述べ、
「実験を行った人々は極めて満足のようだ」
と語った。
記者: Gautam Naik
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NHKニュース 2012年(平成24年)7月5日[木曜日]
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120704/k10013333771000.html
ヒッグス粒子とみられる粒子発見
宇宙の成り立ちに欠かせないものとして、半世紀近く前にその存在が予言されながら見つかっていなかった「ヒッグス粒子」とみられる素粒子を発見したと、日米欧などの国際的な研究グループが発表しました。
ヒッグス粒子は1960年代以降、物理学の標準理論で存在が予言された17の素粒子のうち、ただ1つ見つかっていなかったもので、現代物理学の大きな謎が解明されることになります。
これは4日、日本、アメリカ、ヨーロッパなどの国際的な研究グループが、スイスや東京で記者会見を開いて発表したものです。
研究グループは4年前から、スイスのジュネーブ郊外にあるCERN=ヨーロッパ合同原子核研究機関の1周が27キロある巨大な「加速器」と呼ばれる実験装置を使って、ヒッグス粒子を探してきました。
実験では、2つの陽子を光と同じぐらいの速さまで加速して正面衝突させ、その際に生まれる無数の粒子を調べる手法でヒッグス粒子を探してきました。
これまでに2000兆回余りの衝突を起こさせた結果、およそ2000個の未知の粒子が発見され、その特徴を調べたところ、ヒッグス粒子とみられることが分かったということです。
ヒッグス粒子は、宇宙を構成するすべての物質に「質量」を与えるものとして、1964年に、イギリスの物理学者、ピーター・ヒッグス氏が存在を予言しました。
1960年代に確立された物理学の標準理論で存在が予言された17種類の素粒子のうち、ただ1つ見つかっていなかった素粒子で、発見に至れば、現代物理学の大きな謎が解明されることになります。
「ヒッグス粒子」は、もし存在しなければ、星や生命なども生まれないと考えられることから、「神の粒子」とも言われていて、宇宙の成り立ちを解明する重要な手がかりともなります。
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東京新聞 2012年7月5日 07時04分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012070590070431.html
ヒッグス粒子 ほぼ確認 万物に質量与えた「神の粒子」
万物に質量を与える「ヒッグス粒子」とみられる新しい素粒子を発見したと、欧州合同原子核研究所(CERN、セルン)の実験チームが四日、発表した。
ヒッグス粒子の特徴を示しており、「発見」はほぼ確実になった。「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子の発見で、物理学の標準理論で予言されていた素粒子が出そろう。
宇宙の成り立ちの解明にもつながる画期的成果だ。
実験チームは、東京大など日本の十六機関も参加する「アトラス」チームと、欧米中心の「CMS」チーム。
両チームは、ほぼ光速まで加速した陽子同士を一千兆回以上衝突させ、衝突で生まれる粒子や光を観測し、ヒッグス粒子の痕跡を探した。
その結果、質量が水素原子百三十個ほどの、新たな素粒子があることを観測した。
データの確からしさは、アトラスチームは99・99998%、CMSチームは99・99993%で、物理学上の「発見」と認められる99・9999%をともに上回った。
さらにデータを集め、年内にも最終結論を下す。
実験に使っているセルンの大型加速器「LHC」はJR山手線とほぼ同じ一周二十七キロの加速器で、宇宙誕生時のビッグバンを再現した。
実験で生まれたヒッグス粒子は非常に不安定で、できてもすぐになくなるとされ、直接観測することはできない。
実験に参加している浅井祥仁(しょうじ)東京大准教授は
「別の素粒子に壊れていく様子などは、理論から予想されたヒッグス粒子の特徴とよく合うが、断定をするにはさらに解析を進める必要がある」
と話す。
七月以降の追加実験では、六月までの三倍のデータが得られる予定だ。
両チームは、昨年十二月、ヒッグス粒子の存在が示された可能性は約99%の確率だと発表していた。
今年はLHCのエネルギーを上げて実験しており、昨年の一・五倍のデータが集まった。
新しい素粒子の発見は二〇〇〇年のタウニュートリノ以来となる。
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