2012年6月24日日曜日

福島コシヒカリ:オーストラリアで4期作に挑戦








FNNニュース (2012/06/23 01:35)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00226003.html

豪州で福島の農業をよみがえらせようという計画が進んでいます。

 世界の生態系のおよそ10%が生存するとされる自然大国オーストラリア。
 鉄鉱石や天然ガスなど資源が豊富で、恵まれているその広さ、生き物の多さ、人口密度の低さ、すべてが桁外れです。
 オーストラリア北東部の街エアでは、1年に4回の収穫で、福島の農業をよみがえらせようという桁外れなプロジェクトが進んでいました。

 6月7日、帰国した1人の男性は、スーツケースから取り出したものについて、
 「これは福島の未来そのものです
と語った。
 オーストラリア北東部クイーンズランド州の街・エアは、人口およそ9,000人で、冬は海水浴客でにぎわう海沿いの街。
 ここに、福島の農業を再生しようと、いわきからやって来た日本人が住んでいる。
 白土健美さん(51)は、ここでたった1人、田んぼ作りに汗を流している。
 白土さんは「骨のかかる仕事ですよ」と話した。
 白土さんは、福島・いわき市の出身で、NPO(民間非営利団体)「いわきワールド田んぼプロジェクト(IWTP)」の中心メンバー。
 州政府の試験場で作っているのは「コシヒカリ」。
 見ればこうべを垂れた稲穂。
 田植え目前、水が張られた田んぼと、雑草の生えた土地。
 白土さんは 
 「どの月が(生産に)一番いいかっていうのを試すために、分けてるんですね」
と話した。

 目指しているのは、異例のコメの4期作。
 日本では、年に1回の収穫、つまり1期作が主流。
 一方、4期作は1年で4回の収穫をするというもの。
 白土さんは「いいコメが作れるというふうに今、実感していまして。田んぼには本当に適したところ」と話した。
 1年を通じて温暖、豊富な地下水、コメ作りにはうってつけの場所だという。
 白土さんは
 「夢と希望を持って農業を続けて、福島の農地を再生させていこうと」
と話した。
 現地のオーストラリア人に理解を求めたコメ作りの意味、それは福島の農地再生、そして農家の未来。

 福島・いわき市の耕作放棄地。
 震災による放射性物質の拡散、そして風評被害。
 農家は農業を続けることが困難になっている。
 そこで白土さんたちは、あるプロジェクトを立ち上げた。
 福島の農地は、菜の花などを栽培して将来につなげる。
 一方、オーストラリアでコメ作りを続けること
 4期作であれば、福島から来る農家たちは、3カ月交代などで行き来すればいいという。
 オーストラリアでは、畑を使った陸稲栽培が主流だが、白土さんは水稲栽培にこだわった。
 水田農法に切り替えれば、雨季の洪水を抑える治水効果や寒暖差の緩和など、地元へのメリットも期待できるという。
 さらに、白土さんの計画に期待を寄せているのは地元の穀物会社。
 ブルー・リボン・ライス社の担当者は
 「とてもエキサイティングだ。この計画はとても理にかなっている」
と話した。
 世界中が取り引き相手で、中でも上得意は中国。
 需要が高まる日本の高級米を輸出することで、安定した販路が確立されることになる。

 田植えから3カ月。
 たっぷりと実った稲穂は、いよいよ収穫となる。
 稲刈りの日、白土さんは
 「こっちに来てください。(刈り方を)説明しますよ」
と話した。
 大勢の地元オーストラリア人たちが集まってくれた。
 交流会の人たち、穀物会社、さらに州政府の担当者も集まった。
 クイーンズランド州政府担当者は
 「日本、特に福島の人々を支援できるかもしれない。
 わたしたちにとってもコメ産業拡大のチャンスだ」
と話した。
 将来、海外へ輸出したいと夢を膨らます州政府。
 地元メディアも大きな関心を寄せている。
 オーストラリア産コシヒカリ、35kgの収穫が終わった。
 白土さんは
 「あとは日本に持って帰ったときにどういう評価(を受ける)かですね」
と話した。

 帰国後、いわき市で行われた試食会には、NPOメンバーたちのほか、元農家や農業を目指す若者の姿もあった。
 肥料なし、農薬なし、水と土と太陽の力で育ったオーストラリア産コシヒカリ。
 味について、元農家は「うまい」、「甘いですね」などと話した。
 NPOメンバーは
 「日本人に合います」、
 「広めていくしかない。オーストラリアで作ったということで」
などと話した。
 白土さんは
 「おいしい? よかった」
と話した。
 「おいしい」の一言が、農業を続ける力になる。
 白土さんは
 「福島の農家の方々と一緒に(オーストラリアに)行って、おいしいコメ作りをできたらなと思っております」
と話した。
 農地の再生、農業の未来、白土さんたちの挑戦はまだ始まったばかり。







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